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「契約に基づき、汝に印を授けたり――胸に徴を施し王家の正当なる騎士とし、此処にこれを認めむ」 ソピアの言葉に身を小さく丸め木箱を掲げていた侍女がゆるりとした動作でその気箱の一端を開き、その中にある黒光りする鉄棒を差し出した。 鉄棒は三寸ばかりで取っ手が付き、十字をし其の横棒が上向きの僅かに曲がっている形をしている。 侍女は差し出した手を引き下げると其の手で木箱より一対の蝋燭と燈台、燐寸を取り出し、蝋燭を燈台にのせ、手元で燐寸を擦る、ぼわっと火が上がると、それをすぐさま蝋燭へ移し、燐寸の炎を吹き消すと、燃え滓を見苦しく無いように内袋に仕舞い込み、そっと燈台を前に押し出した。 灯が揺らめくのを一時眺め、手にした鉄棒を神火に当てた。 直様赤く熱を篭らせると、次第にその赤みは生業を収め、内に熱を湛えた。今が最も熱を保っていると知らせているかの様に。 騎士はその間微動なりせず直立を続けていた、然しその瞳には僅かに惶れの意思が見て取れる。激しい鼓動が場内を、彼の耳の内では、覆っていた。然し、自らに科した誓約と制約を胸に、覚悟の決意として胸倉を開け放った。 それを確認し、ソピアは神火の灯火から鉄棒を抜き、次なる言葉を口にする。 「かの者の意思なむ然りと受けたる、いざ徴を施さむ」 高らかに鉄棒を天に翳す。 そして、未だに灼熱の気を帯びる其を胸倉へと落とした。 「っ!」 一瞬にして皮膚の爛れる匂いが広がる。然し、それ程の高熱にも拘らず僅かな呻き声のみを零すものの、次に発する音すら持た無い。 そして、寸陰も無く鉄棒が放されると、辺りの皮膚共共引き千切り乍、歪な十字を彼の胸に色濃く刻んだ。 鉄棒を侍女に渡すと、直様次為る進呈が執り行われる。 木箱の全容が開かれ、内に紗綾模様の絢爛たる鞘が収められ、更なる内に秘めたる刀身に、身を引かす程の悸れを感じさせる。将に作り手の意思が血脈と共に受け継がれている感を受ける。 然し、刹那影が遥か上空へ弾く。 途端無数の管が会場に降り注ぐ。 右肩から左脇腹へ、胸から背へ、幾多の管は全ての民衆を貫く。 僅か、指を弾く間すらなく。 全てがなくなった。 |
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