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第1節―しろ―



私は魔方陣の中に居た。魔方陣は多分ギリシャ文字で書かれているのだろう、どういった意味なのか私にはわからなかった。その部屋は陰湿で、どこぞのオカルト好きの好みそうな雰囲気だった。見回すと四隅に蝋燭が立ち、私の立っている魔方陣のほかにもう一つやや小さめの魔方陣があり、それと繋がるようにして細長い台形状が書かれてる、言うなれば前方後円墳に似ている。先にある小さめの円中にはまだ若そうな男が居た。床まで伸びたローブを着ていて、そのローブにも何かの魔方陣が書いてある。眼鏡もしていて、おしゃれのつもりなのか、左右で色違いのレンズが薄暗い部屋の中でもギラギラとしている。私が知る限りこんな趣味の悪い眼鏡を掛けている人はそうはいない。

 「ソピアを殺せ」

 私はその男の突然の申し出に、頭の中が一瞬で真白になった気がした。

 「式の時、壇上に上がり皆が見える場所で殺せ」

 「それだけか?俺様を呼んでおきながら、たかが一国の姫ごときを殺せと?」

 「不満か?」

 「あぁ不満だね、もう少し食い殺したい」

 「なら、城下にうろついている奴らでも殺していけ、王城に入ったらソピアだけを狙え」

 私が薄くほくそえみ、耳障りな高笑いを散らし、まずはどこから食うか、頭は最後だ、泣き叫ぶ姿はたまらないからなぁ、そうだな足からいくか、その後は手だ、死ねないようにしとかないとなぁ、あぁ腹を抉ってやるのも忘れちゃいけねえなぁ、そう唸り声を頭の底に響かせた。。男が私の目をもう一度みると、私が隠れて無くなる様に見えなくなった。男は私が消えるのを確認し、眼鏡のレンズをローブで二、三十回ひつこく拭いてから魔方陣の上を出た。そして、暫し男は何かに絶えるように背中を丸め、肩を怒らせ、顔面の全て覆うほど大きな手でその表情を隠した。漸く収まりかけたころ、男は顔を上げた、引き裂いたような口に鋭く尖り背後には黒い邪気さえ見えるような笑みをしていた。私は一歩後退った刹那男の背後に大きな長針が付いた時計が見えた、十二時になる直前の時計が。

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